それなり日記

映像作家、三宅美奈子の日記のようなものです。

鯖落ち

 

前回の続き、3人でB&Bに着いたところからスタート。

 

minakomovie.hatenablog.com

 

お店の前に着いたはいいが、人が列をなしている。まだオープンしていないらしい。作家さんとか来ているのかな、などと思いながらふんわりと眺める。

ひとまず我々は近くのベンチに腰を降ろすことにした。この時、まだ3人で手を繋いでいたのでグルっと大回りをしてから着席。めちゃくちゃ目立ってるじゃないか。なんだろう、この大回りは運動会っぽいな。

...分かった、台風の目だ!みんなで棒を持って走る競技にちょっと似てる。この歳になってそんな動きを体験するとは。でもよく考えたら、いつもの友人は台風みたいな人間なので似合っている気がする。いや、似合うってなんだよ。どういうことだ。

 

そんな私の混乱をよそに、いつもの友人は「ああいう感じで並ぶの好きじゃないんだよね」と言っていた。確かにイベントのチケットは取ってある訳で、席がないということはあり得ない。もちろん良い席を取りたいということで並んでいるんだろうが、私もあまり並びたくない派である。Pさんも同意らしい。

こういうところで意見が一致したりするのは面白い。見た目も性格も違う3人だが、考えていることはわりと一致するし、感覚的に似ているので親近感はかなりある。そもそも大人になってから3人で行動することが少なかったのでかなり新鮮だ。

 

私は人付き合いが得意ではないので、仲の良い人は少ない。ご飯を食べたり出かけたりする友人はかなり限られている。たいして仲良くない人、というか興味のない人と会って緊張したりストレスを溜めたくないので、一緒にいてストレスフリーな人としか会わないようにしている。まぁ、それはみんなそうなのかもしれないが。

いつもの友人はストレスフリーな関係になってそれなりに長いし、Pさんに関しては興味しかなかったので、そもそも3人で会うことに抵抗はなかった。にしても、こんな感じになるとは。ちょっと前には予想できなかったことだ。

こんな感じっていうのは3人で手を繋いで、通行人にガン見される関係である。

 

だが、自分がストレスフリーだと感じている場合、相手がめっちゃ気を遣ってくれている場合もある。だから自分が楽だというだけの関係はよろしくない。ストレスフリーは相互でなければならない。

だから私は疲れるような気の遣い方はしないが、観察はする。観察はもちろん趣味であり職業病という側面はあるものの、相手が何を考えているか、どんな感情なのかを推し量ることで必然的に「自分がストレスを与えているかどうか」も見えてくる。相手がめちゃくちゃ隠す人間だと難しいかもしれないが、よく見ていればたいていは分かると思う。

意識的に観察しないと、どうしても自分の快楽を優先してしまう人間だからね、私。でも、家ではあんまり観察はしていない。家だとずっと考え事している気がする。

うちの人にはボケッとしてると突っ込まれるけど、ずーーーーっと考えている。答えの出そうにない人生の大きな問題とか、逆に日常の些末なやらなきゃいけないこととか、全部ごちゃ混ぜで考えている。そして時々、大事なことが抜け落ちる。別個で考えればいいのに出来ない脳味噌。

 

 

話を戻そう。ベンチで会話しているうちに、開場時間になっていた。

さすがに手を解いていた我々は、各々歩いてB&Bへ。汗臭い私の手とPさんの鯖臭い手が自由になっていた。そういえば、いつもの友人の手は何臭かったんだろうか。なぜか臭い前提で申し訳ないが。

スタッフにチケットを見せて店内に入った。まず席に着く前にドリンクを頼むシステムだ。私はジンジャエールを頼んだ。そのあとにふたりが、どうしようどうしようとキャッキャしながら、結局ジンジャエールにしていた。JKは揃えたがるよね。

 

まだそれなりに席は空いており、3人並んで座ることができた。

ようやく村井理子様とのご対面である。そわそわしてテンションが上がってしまう。いつもの友人が店の奥の方にスタンバイする村井さんを見つけ、教えてくれた。彼女もテンションが上がっているようだ。

 

トーク自体は、さすがの武田砂鉄さんという感じで軽快に進んだ。低い淡々としたトーンで冗談を言いながら村井さんに話を振っていく。

武田さんはめちゃくちゃ落ち着いて見えるのだが、私と同い年だった。私が精神的に幼すぎて見た目に出てちゃっているのを加味しても、この差はなんなんだ。どうしたらそんな雰囲気を醸し出せるのか謎だった。人生経験なのか?

村井さんもワードチョイスが面白く、かつ真面目に分かりやすく本の話をしてくれた。特に「自分の世代で終わりにしたい、渡したくないバトン」みたいな話は、心の中で首がもげそうなくらい頷いた。

私も自分より下の若い人たちに嫌な思いをして欲しくないと、切に思っている。目の前で話を聞けて、心から来店チケットにして良かったなぁと思った。

 

そんなトークの最中、いつもの友人とPさんは手を握っていた模様。なんだ抜け駆けか?...とまでは思わないが、愛が溢れすぎなんだよ。そしてトークが終わったあとは、おふたりのサイン会へ突入。これも来店の醍醐味である。

この日、私といつもの友人は村井さんへのお土産を持参していた。イベントの数日前、いつもの友人が「村井さんに何か渡したい」と某所に行こうと悩んでいる時、たまたま私も某所付近に居た。自然と合流する流れとなり、一緒に悩んでお土産を買ったのだ。

いつもの友人は満を持して村井さんにお土産を手渡し、自己紹介をして盛り上がっている。村井さんはいつもの友人のことをSNS上では認識していたので、「やっと会えたね」状態である。(いや、これは辻仁成が完全に初めて接触したミポリンに言った言葉だから、使い方が間違っているか?)

私もヘラヘラと「一緒に手紙を入れておきました」と曰う。私は人見知りなので、こういう時に全然喋れない。へへへへ、と気持ち悪い笑いで逃れようとしてしまう。本当はめちゃくちゃテンションが上がっているんだが。いい歳なんだから、もう少しちゃんとしたい。

 

Pさんはというと、私が千切って渡した紙にサインを書いてもらっていた。かなり小さな手帳の紙である。そのサインは手帳に挟むらしい。

私が常日頃持ち歩いていた紙に好きな作家さんのサインが入り、そしてPさんの手帳に挟まる。うん、いいね。そういう流れは好きだ。何がって言われても言語化は面倒だからしないけど、好き。そう言う趣味なんだわ。

千切るで思い出したが、Pさんは文芸誌を千切って持ち歩くらしい。読みたいところだけ持ち歩けば軽いからだ。いつもの友人もやっているとのこと。あ、いつもの友人が先にやっていたという話だったかもしれない。まぁどちらでもいいが、私もやってみようかと思う。

通常の本を千切るのは憚られるのだが、文芸誌は雑誌だ。雑誌を切り抜いたりすることはよくある。重いからと言ってなかなか読まないより、千切って持ち運んで読む方が誠実な気がしてきた。良き学びだ。

 

 

イベントが終わり、ホクホクしながら駅へと向かった。

相変わらずいつもの友人とPさんは手を繋いで、全世界に自分たちの愛を見せつけようとしている。手が鯖臭かろうと汗をかいていようと気にしないのが愛だと言わんばかりだ。何か見つけちゃったんだろうな、そういう愛よりも確信めいたもの、絶対的な感情の居場所みたいな何か。という、私の観察結果。

そして、ふたりとは路線が別なので私だけさようならの時間となった。Pさんが手を出してきたので握り合ってから別れる。鯖臭い手と汗臭い手の邂逅、再び。お気づきだろうが、さっきから鯖臭い手って言いたいだけである。

 

私は改札を抜けて、トイレへ入った。

手を洗う直前、握り締めたPさんの手を思ったが、さすがに匂いは嗅いでいない。石鹸を泡立てながら「全部落ちちゃったな」と思った。果たして何が落ちたのか。鯖の匂い?Pさんの常在菌?握り締めた感触?いずれにせよ、気持ち悪いことを考えているには違いない。

でも気持ち悪いことを常に考えていないと、映画なんて撮れないんだよ。(暴論)

 

 

そんなこんなで、長時間の会合は幕を閉じた...はずだった。

まさかその翌週も集まることになるとはね。

 

 

 

 

 

おまけ。

このブログは登場人物に監視されています。更新を急かされます。私の日記なのに!

友人とランチをしました。この記事とは別の友人です。

でもこちらの友人もとても面白いので、そのうち記事に登場させようと思ってます。