それなり日記

映像作家、三宅美奈子の日記のようなものです。

魔界・後編『夜が足りない』

 

ブログでも書こうかな、と思いながら珈琲を淹れるためにティファールのポットに水を入れたのち、なぜかコンロの上にセットしてしまった。

「あ、これTwitter(当時)で見たやつだ」と笑えてくる。ちょっとだけ火をつけたい欲求に駆られたが、さすがに大人なのでやっていない。珈琲は無事に美味しく淹れることができた。

TwitterはXとなり、リツイートはリポストとなったようだが、私は相変わらず平常運転だ。

 

さて、今回はようやくサイゼリヤという魔界、後編である。

これを読んで楽しいのは身内だけかと思うが、もしかしたら面白がってくれる人もいるかもしれないので公開している。スターを付けてくれる人たちに感謝。

 

しかし、この日の出来事をこんなに分けて書くことになるとは思わなかった。

前編と中編はこちらからどうぞ。

 

minakomovie.hatenablog.com

 

minakomovie.hatenablog.com

 

 

サイゼリヤを出た我々は「もう一軒行けるだろ」のノリだった。ノンアルなのにもう一軒。なんだろう、高校生より元気かもしれない。

とはいえ夜の22時である。どうしようか...と思っていたら、うちの人から電話がかかってきた。うちの人はその日、地方へ行っていたので家にはいなかった。電話に出ると夜中に帰宅するとのこと。ほっほー、じゃあまだ帰らなくてもいいかな。などど思っていたら、いつもの友人が「代わって!」と言う。

電話を渡すと、許可取りを始めた。もう一軒行っていいかの確認だ。いい歳した私の帰宅時間を気にしての許可取り...そう、私は誰にでも心配される。うちの人は私の帰りが遅いと心配をするし、いつもの友人は「うちの人を心配させること」に関して心配する。心配の連鎖。

 

何度でも言うが、私はいい歳をした大人なので、夜が遅かろうがなんだろうが平気である。だいたい住んでいる地域は治安がいいし、さすがに終電を逃すようなヘマもしない。大人だから最寄りからタクシーを使ったっていいし、防犯には諸々気を使っている。

だが、夜遅いということは心配に値することなのだろう。女だからか?それもあるにはあるだろうが、結局は「私だから」のひとことに尽きる。見てて不安がられる女こと私。分かっているなら、もうちょっと頑張って生活したほうがいいと思う。

...やっぱり武術でも習うか。

 

で、いつもの友人とうちの人は面識があるし、うちの人からすると「私と仲良くしてくれる稀有な人」認識なので、スルッと許可がおりたようだ。「アルコール一滴も飲んでないんですけど、2軒目行っていいですか?」という言葉も効いたかもしれない。アルコールというのは人を狂わせるので(実体験)。

 

晴れて許可もおりたということで、2軒目はPさんが決めてくれた。居酒屋で、個室ばかりのお店だ。とはいえ我々にアルコールを入れる気は毛頭なく、サイゼの続きというノリ。今の我々にアルコールというドーピングは要らないようだ。

歩きながら、Pさんはいつもの友人の二の腕を触り始めた。気持ちいい、と何度も言っている。ようやく調子が出てきたね、触っとけ触っとけ、と他人様の二の腕を見ながら思う。いつもの友人の二の腕は、もはや彼女だけのものではない。

 

後日談だが、Pさんに「いつもの友人の二の腕は、どんな触り心地なのか」を尋ねたところ「ニベア」と返ってきた。ニベア、青い缶のあれだ。まずニベアと聞くと匂いが先に思い浮かんでしまって、触り心地がパッと出てこずに悔しい思いをした。もちもちしっとり、ってところではありそうだが。

私はニベアの匂いが苦手である。吸い込むと鼻の粘膜や内臓が膨張しそうな匂いで、なんだか苦しくなってしまう。その昔、ニベアパックが流行った気がするが、あれを顔に塗りたくるなんて狂気の沙汰だ。と思うくらいには苦手なため、良い意味で表現された「ニベア」が掴み取れずに悲しい。匂いが苦手だから買ってきて塗るわけにもいかないし。

 

ニベアじゃなくて、いつもの友人の二の腕そのものを触ればいいのだけなのでは?と言われそうだが、それはなんか違う。「ニベア」と表現したPさんの心みたいなものも一緒に味わいたいので、二の腕だけを味わうのとは全然違うのだ。

二の腕を味わうとか、また気持ち悪いことを書いている。私は特定の事柄への執着が激しく、こだわりが強いためにこういうことを考えだすと止まらない。困ったものである。

 

 

では、話を戻そう。

居酒屋がある建物に着くと、エレベーターに乗り込んだ。その建物はなぜかテナントが撤退しまくっており、大丈夫か?コロナがそんなに大変だったのか?と一抹の不安を覚える。

居酒屋のあるフロアに着くと、帰る人々に遭遇する。これならサクッと入れるだろうなと思い、入店して店員が来るのを待った。が、一向に来ないし見当たらない。それなりの広さの店に見えるが全然いない。客はたくさんいるが、どうなっているんだ。

いつもの友人を先頭に、奥の方に進んで店員探し。なぜ客側がズンズン進まねばならないのか...そして、こういう時に先陣を切るタイプなのがいつもの友人で、後方を見張るのが私だ。性格が表れるね。

 

そしてとうとう見つけたが、ここでその店員さんが思ってもみない言葉を発した。

「さっきラストオーダー終わっちゃったんです」

うーん、23:30までやっているはずなのに?22時にラストオーダー?もしかしてあれかな、人手が足りなさすぎて大変なのかな。我々は察しがいいので、ごねるわけでもなく外に出た。さっき乗ったばかりのエレベーターに乗り込み、下階を目指す。

 

そして「もうここでいいじゃん」と入ったのは、まさかの某ファミレスだ。ファミレスのノリでいたとはいえ、本当にハシゴすることになるとは。もはや、ニベアより狂気の沙汰かもしれない。でも入れればなんでも良くなっていた我々は、意気揚々と入店。

 

当然のようにスムーズに席を確保でき、安心する。

Pさんがテーブルにあった「猫型の配膳ロボットが来ます」の案内を見て、「これが来るの?」とちょっと嬉しそうにしていた。何その可愛い反応は。私なんてそのロボットにぶつかりそうになって、恥ずかしい思いばかりしているというのに。

あれ、みんなぶつからなくて偉いなと思う。もしかして私、ロボットだと何か感知できなくて避けられないんだろうか。単に人よりも背が低いからだろうか。もしくはロボットって、動く方向が予測しにくいからかもしれない。でもよく考えたら、動かない電柱にすらぶつかりそうになるので予測は関係ないか。

人はね、だいだい避けられるんだよ、本当に。

 

そして我々はドリンクバー3つとポテトフライ、私は前菜をひと皿、いつもの友人は麺、Pさんは和風の定食を注文した。ふたりが思ったよりガッツリ食べようとしている。大丈夫かなぁと思いつつ、よく考えたら時間もあまりないことに気がついた。居酒屋で時間をロスしたために、駄弁る時間が減ってしまった。

かくして我々は、まず注文した品が遅くならないかでソワソワし、届いたら届いたで早食いをする羽目になった。我々というか、いつもの友人とPさんだが。

さらにここでPさんが「臭い」と言い始めた。どうやら焼き魚が臭うらしい。この気温なのでまさか悪くなっているとか?と思っていたら、いつもの友人がそれを嗅いで「こういう魚だよ」と言い放った。

こういう魚、か。つまり「臭い」に関しては否定されていない。なので、私も嗅いでみようかと思ったがやめておいた。

 

いつもの友人もPさんもポテトフライが好物のため、そればかりが減っていく。しかし、夜更のポテトフライは美味しい。ポテトフライ、もしくはポテチ。しょっぱくてカロリーが高いものを夜に食べる、というのは軽く背徳感がある。翌朝に残るのは後悔だったりする訳だが。

 

それぞれが一生懸命食べていたため会話の内容をほぼ忘れてしまったが「コロナに終わりコロナに始まる」話をした。そして我々の生活に影響を及ぼしたコロナとは一体なんだったのか、ということについて議論しなかった。

突然しなかったことを書いて申し訳ないのだが、プライバシーである。

 

 

なんとかかんとか食べ終わり、駅に向かわなければならない時間となった。

今度はノールックで伝票を渡されることも、間違えて一万円札が出てくることもなく、すんなりと会計をして店を出た。電車に乗らなければならない、という使命感は人をシャキッとさせるのかもしれない。

 

そしてそれぞれの道を帰りながら、またすぐにグループLINEが動く。

なぜか私とPさんがそれぞれ腹痛に襲われ、臭い魚のせいではないかという疑惑が沸き起こる。(私の腹痛はたぶん前日の飲酒に起因するものだ)

さらにいつもの友人は「頭ポンポン男」を見てしまい、噛み付いてやりたいと言っていた。それほどに我々にとっては嫌な行為なのである。彼女の言いたいことは分かるが、客観的に見ると「頭ポンポン男」よりも「見ず知らずの男に噛み付く女」の方がアウトなので「許可」と送った。

もちろん、アウトな方が面白いからである。噛みつかれる方はたまったもんじゃないだろうが。(冗談だ、彼女は実際には噛みつかない。やりかねない勢いはあるが)

 

あとPさんに「川端康成の『片腕』みたいに、いつもの友人の腕をレンタルしたらいい」と言ったら「レンタルじゃなくて買いたい」と返ってきた。売買。

ちなみに『片腕』は川端康成の変態性大爆発、みたいな小説なのでもっと広く読まれてほしい。気持ち悪いが、とても良い。田山花袋少女病と双璧をなすヤバさだと思っている。

 

ja.wikipedia.org

www.aozora.gr.jp

 

と、我々の魔の会合をうまいこと文学に帰結させたところで、この長い日記を終えることにする。

ちなみにタイトルの『夜が足りない』は、別れた後にいつもの友人が送ってきたLINEから引用した。歌謡曲ぽくていい。

 

 

 

 

 

おまけ。

umick.shop-pro.jp

さっきから意味もなく豚肉石を眺めているんだけど...欲しい。でも買ってどうするのよ、やめなさい、と自分に言い聞かせています。

台湾の故宮博物館で見た肉形石もうっとりした記憶が。うっとりっていうか、よだれ出そうっていうか。白菜も素敵だったけどね。

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