それなり日記

映像作家、三宅美奈子の日記のようなものです。

履歴が徳島だらけ

 

阿波しらさぎ文学賞の話、後編。

 

徳島のことをまず調べなければ。

そう思ってブラウザを立ち上げたものの、とっかかりがない。私は普段から映画になりそうな気になるネタや、良さそうな風景をメモっているので、ひとまずその中に徳島が関係するものがないか調べた。

いくつかあったので、改めて検索してみる。それを更にWordでまとめていく。しかし、いまいちどれも小説にしようと思うには至らず。

 

でも何か探さねばならない。

仕方がないので手当たり次第、観光地を調べたり、とにかくYouTubeで徳島の動画を見てみた。すると、とある山にある集落の話が目に入った。

いわゆる限界集落の話を書きたい、そう思った。徳島の良いところを掬い取る話が書ければ良いのだが、そもそも私のアンテナはまずマイナス部分に反応してしまう癖があるのだ。

もっと食だとか文化だとか、もしくは躍動感のある題材を取り上げる方が書きやすそうだと思いつつも、その集落の風景が頭にこびりついてしまった。

 

そもそも私は「限界集落」という言い方が好きではない。確かに人口などが限界なんだろうけども。そんなモヤモヤした気持ちを含めたものを、小説に書いてみようと決めた。

 

そこからは連想ゲームだった。というか脚本を書く時も連想ゲームをしていくのだが、その時間がわりと楽しい。その集落の記事を読み漁り、写真を眺め、思いつくことを箇条書きにしていく。

さらに自分の頭やスマホにストックされている「気になっていること」と結びつくものはないか、かけ離れているようで実は接点があるものを探した。

 

そして方向性とおおまかな概要はサクッと決まった。15枚にどう収めるかについては若干不安だったが、ひとまず書き始めることにした。

 

だがしかし、書き出しが難しい。

先日もTwitterで「小説の印象的な書き出しを教えてください」みたいなものを見かけたが、1行目は当然大事である。これは脚本でも「ファーストカットが素晴らしい映画は傑作である」みたいなところが少なからずあるので、印象的にしようとは考える。

特に気をてらわず何気ない導入に思えても、小説の1行目は考え抜かれているものが多いのだと思う。

 

脚本の場合は文章そのもの、語彙を使って印象的にする必要はないので、案外サラッと書けることがある。しかし小説は文章そのものが完成品なので、1行目がなかなか書けなかった。

 

というわけで、まずは「たぶんこんな感じになるであろう」という一文を書いた。保留だ。

そのあと、最後まで書き上げること自体はそれほど大変ではなかった。脚本のように頭の中の風景を書き出し台詞を書き、それに加えて脚本では省く主人公の気持ち、みたいなものを織り込んでいく。

途中で「こりゃ15枚じゃ足りん」と思ったが、想定より早い段階で終わらせる話に切り替えた。するとギリギリ15枚に収まった。

 

しかし、ここからが苦行だった。

まず勢いで書いたものを読み直し、単純に悪文であることに愕然とした。そりゃ最初から上手く書けるなんて思っていないが、とにかく読みにくい。

簡潔にと思いすぎて一文が短すぎたり、かと思いきや修飾語が長かったり変なところにあったり。句読点の使い方もおかしいし、ドヤ顔でよく分からん比喩するのもやめろ!

と、私は今まで脚本書いてきたくせに、やばすぎるだろうと思った。テーマがどうとか、話の流れがどうとかいう問題ではない。文を!ちゃんと書け!読めないだろ!

 

そこから何度も印刷して読んでは直し、読んでは直し、声に出して引っかかりが出るところを修正し、ということを締め切り直前まで繰り返した。

その合間に話の流れもを微調整し、単純な誤字脱字もチェックしているうちに、1行目も「これだな」というのが書けた。

…で、タイトル忘れてたな?

 

タイトル大事。とても大事だ!なんで最後まで放置したのか。

シンプルにしようと思ったが、話そのものが暗喩なのでどストレートにすると合わない感じになる。かと言って変に凝ったのとか、文章みたいな長さにはしたくない。作者のドヤ顔がチラつくものは嫌なのである。

 

単語を書き出しまくり、連想語を検索しまくった結果、造語みたいなものになった。めちくちゃフィットするタイトルは見つからなかったが、わりとふざけてて私っぽいものだと思う。ドヤ顔がうっすら透けて見えなくもないが、薄いから許容範囲とした。

 

最後に募集要項を隅々まで読み返し、不備がないようにチェック、締め切り少し前に郵送で提出した。

郵送にしたのは、なんかやり切った感が出るからだ。物理。しょうもない理由。

 

書くこと自体を迷ったが、思い切って書いてみて良かったと思う。改めて物語を編むことの難しさ、読み直して改稿することの大切さを痛感した。さらに、それがなんだかんだ楽しいと思えた。

そして何より、好きな作家のことをより好きになった。こんな大変な思いをして作品を世に送り出してくれていることに感謝しかない。常々思ってはいるが、自分で書くと骨身にしみた。

 

 

と、やり切った感が出たところで、あることに気がついてしまった。

私は基本的な小説の書式ルールをひとつ、破ってるではないか。破ったというか、なぜかそちらが正しいと思い込んで書いていた。今まで何冊読んだんだよ。

書式の問題なので中身には関係ないし、応募のルールを破った訳でもないし、それが審査に影響するかもよく分からないが。

 

そういうところだよ!人生において変な、かつ大きなミスが多すぎる。気をつけているはずなのにこれだ。もし気を抜いたら何が起こるのか、怖すぎるので考えないことにする。

 

 

 

 

 

安定のエラーを起こして、私の阿波しらさぎ文学賞初応募は幕を閉じた。

来年も気が向いたら書こうかな、と思うくらいには良い体験だった。

 

 

 

 

 

おまけ。

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いくつになっても、こういうのを見るとテンション上がる。可愛い…。